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静かに始まった






少々残酷な描写があります
お読みになる際は注意してご覧ください





「ソーマさん!任務付き合ってください!」
「ご飯一緒に食べませんか?」
「ソーマさーん!」

「仲いいねぇ」
「っあ~………」

明らかにうっとおしがっているソーマを見て、なんとも言えないタクヤだった。

(トオル、他人も自分も鈍いのか………つか二重人格かよ)

「あっトオル。任務に行かないか?」
「いいよー」

ティルとトオルの会話を睨むソーマに、それを見てほくそ笑むティル。さらにソーマは不機嫌になって………

「なんっつー悪循環だよ」

リンドウやサクヤなんかは楽しんでいるが、どうにも気が重い状況である。
そんな哀愁漂うタクヤの背中を見ていたアリサは、

「そうでもないかもしれませんよ?」


「だってトオルさんは、隠すのが上手だから―――」


と呟いた。





アリサが呟いたように、トオルは隠していた。

「………寂しいなぁ」

ソーマと任務に行くのは大体第五部隊に命令が下ったときと、大量掃討の時ぐらいのみ。アナグラにいるときでさえ、中々話すことが出来ない状況だ。

「トオル?」
「なんでもないよ」

ソーマが誰かと仲良くなるのは喜ばしいことなのに、なぜか素直に喜べない自分に戸惑っていた。

「おかしいな、変なの………」




二人が来てからあっという間に一ヵ月がたった。
そんなある日のことである。トオルはエントランスにどこかで見たことがあるような少女がウロウロとさ迷っていたのを見つけた。

「どうしたのかな?」

少女の顔がよく見えるよう腰をかがめてみると、少女はぱっちりとした瞳を真っ直ぐに見つめてきた。

「お姉さまを探していますの。つい最近ここに来たゴッドイーターですわ」
「あ、やっぱりエレンの。初めまして、篠崎トオルです。あなたのお名前は?」
「リィリエッタ・ヘレヴァシュナ・エイゼルシュタインよ。エレンお姉さまが今どこにいらっしゃるかご存知ね」
「多分まだ自室かな。でももうすぐ来ると思うから、あのソファで座って待ってた方がいいよ」
「お気遣い結構ですわ」

フイと顔を背けられてしまった。周りも「やっぱりね」という空気が流れる。

(う~ん………)

そうではないと思うのだが

小さく震えた小さな拳を見てそう感じた。





「あら、リリィではありませんの」
「お姉さま!」

エレベーターからエレンが降りてきた。

「お父様とお母様は?」
「お仕事がお忙しいから、わたしだけですわ。言付けを預かってきたの。『転属の連絡を手紙だけで済ませるとは!』」
「あら、あたくしの晴舞台をたかがそれしきのことで遅らせるわけにはいきませんもの。そもそもあなたを一人でここに寄越すことこそが、信頼の証ですわね」
「………っ」
「あなたとは違いますもの」
「――――お姉さまの、ばか!」

乱暴にエレベーターのボタンを叩き乗り込んでいってしまう。

「………あんな言い方、しなければいいのに」
「今さら人格形成なんてできませんわよ………お父様やお母様は忘れてしまったのですもの。アラガミがどれだけ凶暴かということを」
「そっか」
「勿論、さっき言ったことも嘘ではありませんけれどっ」
「うん、仲直りしないとね」
「………わかっていますわ」
「じゃあ連れてくるね」
「自分で行きますわよ」
「そういうんじゃなくて。リリィが降りた階って倉庫階だから、結構入り組んでるの。行き止まりもないし、迷ったらなかなか出らんないんだよね。私は何度か行ったことあるからどこら辺で迷うかわかってるし」

待っている間に、仲直りを考えていたら?

「じゃあ―――お願いしますわ」





たまたま乗り合わせたソーマとコウタがエントランスに出ると、エレンを囲んで人が集まっていた。

「なーアリサ?どうしたんだ?」
「さっき、例のカルト教から声明文が届いたらしくて」
「ゴッドイーターと一般人の各一名を預かっているから、助けたきゃアラガミ『さま』の殺害をやめろってさ。………で、その二人、どうもエレンの妹とトオルらしい」
「ええぇっ?!」
「声明文に書かれていた二人の特徴は酷似している。なにより、姿を見ていない」
「あたくしの、せいですの………あたくしも探しに、いいえ、そもそも意地を張らなければっ」
「妹と軽い喧嘩したらしくてさ、倉庫階に行っちまったもんだからトオルが迎えに行ってそのまま戻ってこないんだと――――ってオイ、ソーマ?!」

タクヤの言葉を聞くなり、ソーマは走り出す。エレベーターなんて待っていられず階段を駆け上がった。息切れはほとんどせず階に着いたその場で叫ぶ。

「トオル!!」





場所は変わり、外部居住区のどこか。
グスグス、と鼻を小さくすする音でトオルは目を覚ました。

「………リリィ、だいじょうぶ?」
「聞きたいのはこっちだよっ!頭から血が流れてるし、ぜっぜんぜん起きないから、死んじゃったのかってぇ!」
「やっぱり口調、そういうのだったんだ」
「今、そんなのカンケーないよっ」
「うん、でもそっちのほうがいいな」
「なにノンキなこと言って、るの?!」
「だいじょうぶ、だいじょうぶ。頭からの血は大袈裟に出るんだ。頭痛もしないし、意識もハッキリしてるから、心配しなくてもだいじょうぶ」

確かに頬を伝う血は不愉快だが、それだけだ。

「ようやく起きたか」

扉代わりのカーテンの向こう側から、頭の上からくるぶしまで大きなフードつきの簡素なマントを被った人間が入ってくる。顔はフードで隠れて見えないが、体格や声質から男であるとわかった。

「アラガミを信仰してる酔狂な奴らか」
「酔狂ではないっ我々が真実であり正義なのだ!!」
「もう、なんだっていいわよ。で、私たちをどうするつもり?」
「お前たちは愚かなゴッドイーターと一般人の代表としてアラガミ様に捧げるのだ。さすれば神も少しはお怒りを静めるであろう」
「全部の『カミサマ』に捧げるというなら、人間のほうが足りないわね」

馬鹿馬鹿しい、とトオルは毒づくが男は気にもしないようだ。これから彼(達、だろう)が行うであろう儀式がいかに『正しくて』『素晴らしくて』『清純な』行為であるかと語る。

「けど、まぁ………まさか裏切り者がいるなんてね」

男の右手にはゴッドイーターの証である腕輪があった。





「ちょっとそこの名無しのゴンベイ」
「なんだそれは」
「昔の皮肉。まぁそれはどうでもいい。とりあえずその『生け贄』とやらから、この子は外して。っていうか逃がしなさい」
「駄目だダメだ!!アラガミ様を殺害する者、その支持をする者がいなくては!」
「こんな子供でいいんだ?」
「アラガミ様の死で生活を送っている!」
「でも、まだ子供だわ。それに私は第5部隊。知ってるでしょ。私は何体ものテスカトリポカを殺してる。あなたたちが言う最も罪深き者じゃない?」
「確かにな………」
「?!」

リリィの瞳が驚愕に見開かれるがすぐに男によって目隠しをされてしまった。

「トオルっ!」
「また会いましょう、リリィ」



「だいじょうぶ、大丈夫」





「腕輪の生体反応からやはり、トオルが連れ去られたのは間違いない。おそらく一緒にいるだろうリィリエッタもな」

ツバキからの報告はさらに追い討ちをかけるものだった。

「それに裏切り者がいた」
「裏切り者?」
「トオルの生体反応のすぐ近くで違うゴッドイーターの生体反応もあった。その者と連絡がつかん」

それは思い込みの隙をつかれたも同然。アラガミを信仰する人間がまさかアラガミを殺す集団に紛れ込むとは、誰も思わない。

「過ぎたことを言っていても仕方あるまい。とりあえず今警備兵が向かっている。じきに――――」



「一人、帰ってきたぞ!」





帰らなきゃ
伝えなきゃ
足が棒になっても



助けて!



「リリィ!」

荒い息で今にも崩れ落ちそうなリリィは、ソーマに駆け寄った。

「トオル、わたしっを、逃がすよう、に、してくれたの!助けに、行ってあげてっ」



「あなたの名前を、呼んでいたから」



リリィは内心、今の自分の状態をどこか遠いところから見ていた。本来自分は人見知りが激しく、初対面の人間に対しつっけんどんな態度をとってしまう。いくら姉のエレンからソーマの容姿を聞いて知っていたとしても近づこうなんて思わなかった。けれど、気を失っていた時にトオルがソーマを呼んだ。まるで何かを請い願うように。それだけで十分である。
言い切って咳き込むリリィに、ソーマは

「そうか」

と小さく、力強く言った。





「コウタ、トオルの名前を外してアリサとタクヤの名前をいれろ」
「りょーかいっ!」
「おいおいリーダーさんよ、待機命令無視か」
「カルトの奴らはテスカを崇拝している。固定任務はそのテスカ討伐。このテスカ以外まだ確認されてねぇから十中八九、贖罪の街だ」

ぐだぐだ言ってねぇで早く準備しろ、と言いたげに睨むソーマを見てタクヤは苦笑した。

「んじゃアリサ、久々のテスカだ。準備を怠るな」
「了解です」
「ソーマ、コウタ。カーゴじゃ遅い。知り合いのヘリ操縦士に話つけてやるから先に行ってな」



「―――タクヤさん!」



一歩前に出たティルは神妙な面持ちでタクヤの肩を掴んだ。

「心配するな。確かに久しぶりだが、数えきれないほど戦ってきてる相手だ。遅れはとらないさ」

違う

だろうなとは思った。いや、絶対に違うと思っている。
タクヤは知っている。ティルがトオルをどんな風に思っていてどんな風に接していて、『何をしたのか』。

(知りたくなかったな………)





見慣れた贖罪の街。本来の入り口ではないところから入った教会。人喰らう神を崇めるフードコートの大群を眺める。
左横では裏切り者が何事かを高らかにくっちゃべっている。罪深き者を捧げよとか、怒りを静めたもうとか。

(飽きたなぁ)

とはいえ両手首は後ろで拘束されているから、たとえ横のは倒せても足だけではここを抜けることはできない。一応他にも方法はあるのだが、いかんせんタイミングがない。
しかしトオルは待っているだけの『お姫様』ではなかった。じっくりと、その時を待っていた。

(――――来た)

「おお、いらしたぞテスカトリポカ様が!」





二階部分に大きくあいたアラガミ道で、テスカトリポカが見下ろしていた。

「あんな能面の顔に戦車みたいなカミサマが、何を救ってくれるってんだ」

吐き捨てるように言った言葉は誰にも聞こえることがなく、歓喜にかき消される。だが、今ならいいタイミングであった。
そっとその場から動いて、瓦礫の中から突き出た角で服の右腕側の布を破る。綿から出てきたのは収納式のコンバットナイフだ。落ちきる前に拾い、縄を切った。
それと同時にテスカトリポカが降り立ち

人を喰らった。

一瞬の間があって、肉を貪る嫌な音がして、さざ波のように戸惑う声が聞こえ始める。どうして、アラガミ様が我々を、喰われるのはあの女ではないのか、そういえばなぜ刃物を、等々。

「何を突っ立ってんの?早く逃げなさい!!」

しかして、言ったはしから二人目が喰われた。まだ動揺したままの集団。

「生きたきゃ逃げて!!」

トオルだってとっとと逃げ出したい。けれど置いて逃げることは見捨てたも同然だ。カルト集団に縁も義理もない(むしろ被害を受けた)が、後ろで殺されていくのは気が引ける。

パンッ

服に隠していた閃光弾を叩きつけるが、三秒しかもたない。ようやく逃げる気になったが、統率を失った集団がまともに逃げるわけがなく、また閃光弾を叩きつける。
気を逸らせるものは、もう無い。



「死ぬ気か」





「そんなつもりはないよ」
「そうか。ならさっさと行け」
「死なないでね」
「誰に言ってんだ」

横に降り立ったソーマはすぐさま補食中のテスカトリポカに向かってチャージクラッシュを落とす。痛覚があるわけないのだが遠吠えをあげ(おそらく邪魔されたからであろう)、ソーマに向き合った。

ドンドンドンッ

「私たちもいますよ」
「っつーか、ソーマ!先に行くなよなっ」

強力なホーミング弾で軽いダウンをさせながらタクヤとアリサ、コウタが逃げまどう人間の間を縫ってやってきた。

「人命優先!誰も死なせるなっ」
「「了解!!」」
「トオル、統率と誘導!」
「はい!」

刃物を一旦しまい、声を飛ばす。

「あなたも!何してるの!?」

裏切り者はぼんやり立ちすくんでいた。何事かを呟いてもいる。

「終わった……失敗…………しょぶん――――処分?」



どむっ



「――――ぇ?」

口から溢れ出た血液がトオルの頬まで飛んできた。

「構うな、行けっ!」
「っ!!」

ソーマの声で我にかえり慌てて走り出す。



名も知らぬ『裏切り者』が死んだ





「全く部隊長が揃いも揃って軍規違反とは何事だ!」

タクヤとソーマは戻ってきてすぐ支部長室に向かう。その支部長ツバキは二人の予想通り怒りを帯びていた。

「いやーニアミスって怖いですねー」
「緊急事態だったからな」

ちっとも悪びれた様子のない二人にさらにツバキのイライラが増していく。

「私がこんなことで手間取るとでも思ったか?!」
「ツバキさんの有能さは十二分にわかってますって。ただその有能さより俺たちの我慢が低かったんですよ」
「まったく無事だったからよかったものの………いや、カルト教徒は違うが」
「あの裏切り者もといアウラ・カムラ?はどうだったんですか?」
「すぐに偵察隊を向かわせたが………報告通り、内臓から破裂して死んでいた。人工の爆弾でな」
「………処分と言っていたが」
「アウラがあの集団の幹部だったのは裏がとれている。しかしそのアウラを裏で指揮していたのは誰なのかわからん」
「けどこのアナグラ内にいることは間違いないでしょうね」
「まったく頭の痛い話だ」



「まぁ追々対処していく。ともかくお前たちの処分が先だな」





「ツバキさん、こりゃないぜ」

ソーマとタクヤにかせられたのは軍規違反の始末書と反省文と報告書、さらにトオルの退院まで面会禁止。一緒に行ったコウタとアリサも反省文と面会禁止。残った隊員も面会禁止となってしまった。

「でもま、特に異常もないようだし。よかったもんだ。な?」
「…………アイツ」
「うん?――――あ」

リリィは二人に気づかれて、壁に隠れてしまった。

「おぉい、リリィ」

名前を呼ばれて恐る恐る顔を出す。確かに人見知りが激しいようだ。さっきはソーマに突っかかっていったのは必死だったからであろう。
まるで小動物を手懐けているようだなぁ、とタクヤは思った。

「トオルの見舞いに来たんだろ?」

こっくり、と頷く。まだ警戒心は解かれていないようだ。

「じゃあ早く元気な姿を見せてやってくれないかな。ちゃんと帰れたか、すごく心配してたからさ」
「…………あなたたちは?」
「う~ん、俺たち禁止されちゃったんだよ………だからいつ退院できるのかも聞いてきてほしいんだ。ダメかな」
「いいわよ。聞いてあげる」
「よかった!じゃあよろしくな」





「……………トオル」
「あ、リリィ!」
「こら動かない!」

リリィが病室に入るとトオルは診察中だった。姉とは全く違う女性の体に少しドキドキする。

「ん、特に打ち身とかもないようね。これなら2~3日で退院してもいいわよ」
「そんなに?」
「あのね、貴女は頭を殴られてるの!今は異常なくても後からってことがあるの。特に第五部隊の貴女はいい機会よ。この機にゆっくり養生なさい」

颯爽と女医は去っていき、トオルとリリィだけになる。
病服を治しつつ、トオルはため息をついた。

「あ~ぁ。元気なのに動けないことほど辛いことはないわ。ね?」
「本当に元気だね」
「うん、元気そうでよかった」
「…………あなた、ばか、だわ」
「逃げ切る自信はあったし、なにより――――助けに来てくれるって思ってたから」
「………来れないわよ、あの人たち」
「うん?」
「ツバキって人がダメだと」
「そんな、ツバキさん殺生な」

ありありと落ち込むトオルを見て、リリィは小さく笑った。





その夜
ソーマの携帯端末が鳴った。

『やほー』
「…………随分と元気だな」
『そりゃあ、まーね。でも医者には2~3日大人しくしてろって言われちゃった』
「なら大人しくしてろ」
『まぁまぁ、その前にちょっと』
「なんだ」
『助けに来てくれてありがとう』
「…………大したことじゃねぇ」
『ツバキさんに大目玉くらったのに?』
「大したことじゃねぇ」
『そうなの?私は――――私はソーマに会えないの寂しいけどなぁ』
「!!」
『せめて二日で帰れるようになりたいもんだね。んじゃ、おやすみっ』

勝手に切られて、それを知らせる不快な音を聞きながら固まったまま。そしてその顔は真っ赤で――――トオルも赤くなっていることをお互いが知ることはなかった。







別室では

「申し訳ありません。次こそは必ず」





不穏な会話がなされていたことを、誰も知ることはなかった。







祈りにも似た
狂信の宴



長い夜の、始まり





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