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未来(さき)を見つめる勇気がほしい


泣く子も黙る丑三つ時。全てが眠りに落ちている頃。出撃ゲートが開いて人が入ってきた。踏み出す音は軽やかに。それが彼の待っていた人物であった。

「………おい、こら」
「ぴっ?!」

奇妙な声をあげて人は立ち止まった。そしてゆっくりゆっくりと声がした方へと顔を向けた。

「ソ、ソーマ………こんばんは?」
「随分と遅いお帰りだな、今日も」
「…………あは」

トオルは気まずそうに笑った。





「任務内容はザイゴート15体だったな」
「結構な数だよね。うん、頑張ったなぁ」
「出たのは22時。しかも一旦ここに帰っている」
「忘れ物しちゃってー」
「外部居住区にか?」
「……………」

へらりと笑っていた表情が引き締まる。じっと睨み合うこと、しばし。

「何か隠しているな?」
「そりゃ人間一つや二つや三つ、隠し事くらいあるでしょー。ソーマだって、私に隠してることあるんじゃない?」
「お前の場合は、危なっかしいからだ」

今までのことを鑑みるに、命の危険や人権侵害がありそうだったのだ。信用は、ない。

「…………聞き出すまで部屋に帰さない、とか?」
「そうだな。朝になりゃ他の奴らが起きてくるだろうな」
「とゆーことは、私の不審な行動はソーマ以外、知らない?」
「若干、奇妙に思い始めてるが」

ひとつ、ふたつ瞬きをしてため息をつく。そして両手をあげた。

「わかった、言うよ。どっちにしろいつかは言うつもりだったしね………でも今はダメ」



「知りたいなら、付き合ってよ」





朝早々、トオルが運転する車に揺られてソーマはため息をついた。なにせ、いきなり『付き合え』と言われても内心かなり動揺したのだが、蓋を開けてみれば『ある場所に行くから付いてきて欲しい』ということだったのだから。

「もうすぐ着くよ」

ふと気づけば辺りはアナグラからあまり離れていない場所だった。どうやら遠回りしてきたようだ。

「ケースから出さなくていいから、神機は持っていってね」

足取り軽く荒廃した街中を進んでいく。

建物の原形がほぼ残っていない道なき道をトオルは迷いなく歩いていく。

「外部居住区には約13万人が住んでいるよね。その中でフェンリルの配給を受けてない人は、何人いると思う?」
「………さぁ」
「大体2000人ぐらい」
「そんなにか」
「6人に1人は受けてないの。結構多いよね。でね、その人たちはどうして受けないか知ってる?」
「…………」

思い出されるのはニュースのデモ映像。1~2ヶ月に一度、配給量の増加を求める民衆が流れる。

「信用出来ないんだってさ。もしかしたら本当は食糧がいっぱいあって、フェンリルの権力を振りかざしたいんだって」

トオルがどんな表情をしているか、真後ろにいるソーマに窺い知る術はない。

「そういう人たちは北の方に集まって暮らしてた。私たちはそんなコロニーの近くに住んでたからよく知ってる。ちょっと狭い路地に入れば女の人が身体を売ってたし、男の人はみんなマンホールを抜けて素材探し。食糧は高値で売買されてたなぁ…………それでも食糧は足りない」

「殺人や盗み騙しはなかった。それはある人物が頂点に立ってたから。流す食糧を作ってた人がいたから」


「トオル、誰だそいつは」





背筋をピンと伸ばした老人が立っていた。足元には蓋が空いたマンホール。

「私の荷物を一緒に運んでくれる人。大丈夫、信用出来る人だよ」
「ならいい………早くしなさい」
「はいはーい」

老人は空いたマンホールに入っていった。

「あそこ、2000人の胃袋を掴んでるとこの入り口だよ。ふふ、実はね、あのおじいちゃんと仲良しなの。お父さんも手伝ってたってこともあるけどね」



そのマンホールは普通のマンホールではなかった。神機もすっぽりと抜けてしまう穴は、やや薄汚れた道に繋がっている。

「ここからさらに降りるよ。多分、地下街よりもっと深いんじゃないかな。ねぇおじいちゃん」
「知らんよ」

なんとも愛想のない老人である。





ともあれ、階段や梯子を降りること数回。大型のエレベーターまでやってきた。それに三人は乗り込み、さらに降りる。確かに地下街より深い。

「今向かってるとこは、旧時代の技術の忰(すい)を集めて作られた地下熱発電のシェルターで、そこを改良してお米や果物の栽培しはじめたのがおじいちゃん」

トオルの説明に口を挟むことなくずっと黙ったままの老人は、トオルも名前を知らないのだという。名前を捨てたらしい。
そうこうしている内に、ひどくゆっくり降りていたエレベーターが止まり、重い音を響かせて扉が開いた。

そして目の前に広がる緑





トオルは扉が開いたとたん、喜び勇んでさっさと奥へ進んでいってしまった。しかし鬱蒼と繁った中をどうやって歩いたらいいのかわからないソーマは、何故かエレベーターから降りて動かない老人の隣で立ちつくす。
その老人が呟いた。

「人がヒトであることを証明することが出来るか?」
「……………は?」
「こう長く生きていると、カンがよくなる。だからあの子も君も、少々違和感を感じる」
「!」
「だからかね、聞かれたよあの子に。ヒトとはなんたるかを」
「…………」
「難しくはない」



「なんでも、誰でもいいんだ。慈しみ、愛せれば」





「おーい、ソーマ!」

緑の向こうで手を振るトオルが、眩しく見えた。





「さ~て、私用も済んだことだし、お呼びしましょうかね」

カチカチと端末を弄る側で、車に積まれた諸々を見てため息をついた。本当に荷物持ちだったな、と。

「こちら篠崎トオル。例の件について話が通ったので来られたし」





10分もせずにヘリが三台、地に降り立った。真ん中のヘリからまず最初に降り立ったのは、

「ツバキさん、お早い到着で」

そのすぐ後から第一部隊全員が降りた。その顔はすべて困惑、である。

「食糧問題は慢性的だからな」
「ええ、そうです」
「早速案内を………と言いたいが、素直に教えてはくれないのだろうな」

ツバキの視線が老人に移る。

「条件があるのです。まずは黙って聞いていただけますか?」

そしてトオルは、ソーマが老人から聞かされたことを話始めた。





「子供がどれだけ死んでいるか、わかるかね」

仮初めの夫婦が多かった。しかしそれは金を手っ取り早く手に入れるため協力しているだけだ。女は身体を売り、男は外へ素材さがし。だが、問題があった。幾度も身体を売れば結果が出てしまうこと。つまり、妊娠してしまうのだ。けれど、おろそうにもお金がかかる。だから産むしかない。

「金がないから売っているのに、食いぶちが増えたら意味がない」

その場合、捨てられるのだ。産まれて、へその緒がまだついている赤ん坊を、アラガミに食べさせて証拠を消すのだ。

「だが、育てるヤツもいる」

少しの間我慢すれば、立派な働き手になる。狭くて小さい空間にある素材を取ってこさせるのだ。
それはかなり危険なこと。だから、

「逃げ遅れ、喰われる子供がいる。親が喰われ、なんとか戻ってきても食糧を与えてくれる人間はいないから、のたれ死ぬ子供がいる」

トオルは、もうそんなものを見たくないのだ。





「………だから、私は条件を出します」

「未登録の子供たち全員を保護し、きちんとした食事と生活を確約すること。それから未登録者を優先に採用増加。とても広い場所なので、人手が沢山必要だから、雇用人数を拡大してほしいです」
「大人の未登録者に関してはこちらの老人に頼んで、フェンリルが条件を飲み次第登録することになっています…………彼らは、私のことを信用してくれました。私の見たこと聞いたことを知って、それならばと治安改善をすると言ってくれました。――――彼らも嫌なんです。自分達の勝手で死んでゆくのを見るのが」





次々と入り口へと老人の後をついて入っていく調査班と回収班。そして運び出される様々な食糧の一部。これからフェンリルに戻って品種改良などの研究が行われるのだろう。その様をトオルとソーマは車にもたれ、眺めていた。

「本当はね、もっと早くに知らせたかった」

ゴッドイーターになってすぐ、アナグラの食糧製作部に行ったのだ。そこは噂とは違い、ニュースなどで流れている情報と同じだった。

食糧は、ギリギリであること

それでもなかなか踏み出すことは出来なかった。

「これらはね、トオヤとハルカと一緒に飲もうって話してたの。十年後………私とハルカが二十歳になったときに、って。他にも沢山、思い出があったから二の足踏んじゃって………」

トオルは空を仰ぎ見る。太陽がもうすぐ真上に差し掛かるころだ。

「でも色んなことがあって、考えさせられた。私は何度も心身共に助けられた。悲しみに暮れて、後ろばかり振り向いていた私を、前を向くようにしてくれた。少し先の未来を願えるようになった………それを私だけで止めちゃいけないって思えるようになった。子供たちにも、それがなくてはならないと」



「ありがとう」








悲しみのyesterday
辛いこともあった
けどそれだけじゃないことも知っている

未来へのtomorrow
辛いことがあるだろう
けどそれだけじゃないことを知りたい



ありがとう
私は皆のおかげで今を生きているんだ





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